【短】背伸びしてモックカクテル





 私は来た道をUターンして、そのまま走った。

 走って走って、いつの間にか涙が止まらなくなって。適当に入った公園のぶらんこに座った瞬間、雨が降り出した。



 何故か、私に嫌なことがあった日には雨が降るらしい。

 今日も傘は持ってない。


 少し動けば東屋があるから雨宿りはできるけど……。足が思うように動かない。だからもう諦めた。濡れるがままに任せることにした。



 ……そのまま、何分経った頃だっただろう。




「大丈夫? びしょ濡れですけど」




 元カレにフラれたあの日と、全く同じ言葉が聞こえ、やはり同じように黒い傘を差し出された。


 思わずドキドキしてしまう、大好きな声。

 ただ、あの日と違うのは……。




「良かった、見つかって」




 春樹さんが、ぜえぜえと苦しそうに肩で息をしていたところ。

 彼は傘を持っていない方の手で額の汗を拭い、私の顔をのぞきこむ。




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