【短】背伸びしてモックカクテル





「おう、お帰り春樹。……と志緒ちゃん。びしょびしょだな」




 今度こそ入ったSoléil&Luneの店内。

 店にはオーナー一人で、確かにもう月岡さんはいない。




「さっきは驚いたぞ。春樹のやつ、志緒ちゃんがいた気がするっつって突然走って出てくんだもんな」


「すみませんでした」


「まあ良いけどな。はい、とりあえず甘い物でも食べな」




 借りたタオルで水気を拭い、いつものカウンター席に座った私にオーナーが小さなケーキを出してくれた。カフェ営業時のメニューの残りのようだ。

 半分ほど食べた頃にはどうにか気持ちが落ち着き、やっとまっすぐ春樹さんの顔を見ることができた。




「春樹さん、ありがとうございました」


「うん。元気になったみたいで良かった」




 相変わらず、どうして泣いていたのか聞いてはこない。


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