【短】背伸びしてモックカクテル
色々なジュースやシロップを混ぜて作るノンアルコール飲料をモクテルと呼ぶのだとしたら、今回はそれにも該当しないことになる。
私には春樹さんの意図がよくわからなかったけど、一連のやり取りを聞いていたオーナーは突然吹き出した。
「ハハっ、やるねぇ。スクリュードライバーときたか」
「えっと、ちょっとオシャレに飾り付けた、ただのオレンジジュースですよね?」
「それがなあ、スクリュードライバーとして贈ることに意味があるんだわ。花に花言葉があるみたいに、カクテルにはカクテル言葉ってのがあって……」
「叔父さん。そういうネタバレは野暮ですよ」
何やら豆知識を語ろうとしたオーナーを、春樹さんは微笑みながら制した。
オーナーは「はいはい、甘酸っぱいことで」とか何とか呟いて、もう続きを教えてはくれそうにない。
意味がわからず首を傾げることしかできない私に、春樹さんはいたずらっぽく言う。