【短】背伸びしてモックカクテル




 定位置になっているカウンター席の奥から二番目に着いて、ドリンクを作る春樹さんを眺める。この時間が最近の私にとって何よりの癒しだ。


 ちなみに、穏やかでふんわりとした雰囲気の春樹さんは女性客から人気が高い。


 お客さんの多い時間帯は誰かしらに捕まっていることが多いから、カフェメニュー目当ての人が帰ってアルコール目当ての人はまだ来ていない、この半端な時間が一番この人を独占できるのだ。


 春樹さんは少し迷うようにジュースやシロップ類を眺め、シェイカーに数種類のジュースと氷を入れた。

 ガシャガシャと小気味よい音を響かせながら何度かシェイカーを振り、カクテルグラスへ注ぐ。



「お待たせしました。“シンデレラ”です」



 目の前に置かれたのは、ふわりと泡だったフルーツの香りがするモクテル。この見た目だけで一気にテンションが上がる。


 ここに通うようになって知ったけど、カクテルは種類によって混ぜ方や使うグラスの形が決まっているらしい。


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