【短】背伸びしてモックカクテル



 私は照れ隠しにわざとらしく肩をすくめてみせながら、そっとグラスに口を付けた。


 パイナップルのフルーティーな甘みと柑橘系の酸味がバランスよく広がる。少し泡だった舌ざわりは普通のミックスジュースとはまた違った飲み物のよう。

 一気に飲んでしまうのはもったいなくて、一口をしっかり味わった後ゆっくりグラスをテーブルに戻す。




「相変わらず美味しそうに飲んでくれますね」


「……あんまり見られると恥ずかしいんですけど」


「ごめん、ついね。じゃあお詫びにこれどうぞ」




 春樹さんはそう言って、クラッカーにクリームチーズをのせたシンプルなカナッペをサービスしてくれる。




「オーナー、春樹さんが口説いてくるんですけど!」


「こいつのは天然だから許してやって志緒ちゃん」


「まったく、このガチ恋製造機め」




 ……こんなの、好きになるなという方が難しいのではないだろうか。

 

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