彼はチョコレートの香り


「こんにちわ!」

照れながら言う一宮
いつもだったら

「こんにちわ」

って笑顔で返せると思う

でも・・・

「・・・ちわ・・」

こんな素っ気ない挨拶しか返せない

一宮は気にしていない様子で話を続ける

「どうですか?冬祭(冬の文化祭)のメイド服です」

可愛い

そう言えたらいいのに、今日の俺は素直じゃない

黙って小さく頷くだけ

「私が一番最初にこのメイド服きたんですよみんなには“一宮って、こんなだっけ?”って言われてムカッとしてたんですよね」

ヘラヘラと笑いながらそう言う一宮にまた無性に腹がたつ

「それだけ?それだけのことで呼んだの?俺、忙がしいんだけど」

本当は笹木ちゃんに、一宮が読んでるって聞いた

嬉しかった




なのに

俺は最低だ



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