目隠しの姫君


イライラが募る。


目をそらしたあたしに、慎が話しかけてきた。


「清?お前なんか変。どした?」

……どーせ、変です。


田辺さんとは大違いだもんね。


「どーもしない」


「嘘つけ。眉間にシワ寄ってるし」


あーもう!

「慎には関係ない」

ほっといてよ!



だけど…言ったとたん後悔が押し寄せて。


関係ないなんて、あたしが言われたら悲しいもん。


だけど、発した言葉はもう元には戻せなくて…


ああ…なにやってんの。

慎は何にも悪くないのに。



…ポンポン


その時、あたしの頭に優しく降ってきた、


慎の…手。


「やっぱ、お前変。体調悪いんなら言えよ?」


そう言って優しく笑う慎は…なんだか大人で。


「……うん」


あたしはそれしか言えなくて。


慎は、もう一回、あたしの頭をポンとして行ってしまった。


あたしの心はなんだかおかしくて。


あの笑顔で、田辺さんに笑いかけるのかな、とか


あの手で、田辺さんにも触れるのかな……とか


あたし…………





< 22 / 54 >

この作品をシェア

pagetop