ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 約束を載せた輝きは、どれほど心を強くするだろう。
 深雪山柚花(みゆきやまゆずか)は笑みを浮かべたまま目の前の二人を見る。

 老舗デパート喜勢丹(きせたん)の一階にある宝石店『parure(パリュール)』に勤める彼女は今、結婚を予定している二人の指輪選びを手伝っていた。

 仲睦ましげな二人はショーケースから選び取った指輪を手に、真剣に、だけどうれしそうに眺めている。

 ケース越しに二人の前に立つ自分は白いシャツに会社支給の黒いジャケットとスカート。髪はきっちりとまとめ、左手には白い手袋。ジュエリーを手の脂などの汚れから守るためであり、右手が素手なのはネックレスの引き輪を扱うときなどの細かい作業をするためだ。

「私、これがいい」
 女性が言い、男性が微笑とともに頷いた。彼女の左手の薬指には試着した指輪。スタンダードなプラチナの土台に一粒のダイヤが輝いている。

「すごく似合ってるよ。俺はどうかな」
 対になった指輪をはめた男性は彼女の手に自分の手を並べて言った。

「似合ってるよ」
 女性はにこにこと男性を見つめる。

「ダイヤは永遠を象徴する石ですから、お二人の門出にピッタリです」
 柚花の顔に心からの笑みがこぼれる。幸せの瞬間に立ち会えるのは柚花にとっても幸せで、仕事のやりがいでもある。

 選んだ指輪はいったん預かりとなる。二人の名前を刻んでサイズを調整し、後日お渡しするのだ。
 引換券を受け取って嬉しそうな二人を見送り、柚花はふうっと息をついた。
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