【受賞】ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 やっぱり高いな。
 サファイアとは違う深いブルーを見ながら、柚花はため息をつく。

 安くても十万円以上する。
 一人暮らしで生活にきゅうきゅうとしている現在、手を出す余裕はなかった。それでももし入荷したら社割で買おうと思っているのだが、なかなか店への入荷もない。

 店長に昇格したら、今度こそ買おう。

 ブルーガーネットを教えてくれた人を思い出し、甘酸っぱい思いが胸に広がった。今、彼はどうしているだろう。イギリス勤務のあと、今はアメリカで活躍しているはずだけど。

 食堂の入口がざわつき、柚花はそちらに目をやった。
 デパートの支配人、柴原進(しばはらすすむ)がいた。
 彼はたまに食堂のチェックのために社員食堂を利用するとは聞いていたが、遭遇するのは初めてだった。

「伯父さまあ!」
 きゃぴっとした声がして、萌美が現れた。

 休憩時間をずらした意味、と柚花は頭を抱えたくなった。彼女がここにいるということは今は一人で沙知絵が対応しているはずだ。このまま戻るか悩み、ごはんだけは許して、と思い直す。すぐに売り場に戻るべく、急いで食べ始める。

 萌美が柚花を見て、にやっと笑った。
 なにか嫌な予感がする。
 そう思った柚花の耳に、萌美の声が届く。
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