ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
翌日の月曜日、出勤した柚花はメールチェックをして目を訝しげに細めた。
助っ人についての返事が来ていたが『深雪山さんも知ってる人。お楽しみに!』と持って回った言い方をされ、名前は書かれていなかった。
誰なんだろう?
首をかしげていると、男性の声が聞こえた。
「萌美さん」
柚花がなにげなくそちらを見ると、小柄で気弱そうな男性が萌美に声をかけたところだった。
二十代だろうか、髪はぼさぼさで銀縁の眼鏡をかけている。うつむきがちで、よれたTシャツに洗いざらしたジーンズという服装だった。
「奥長さん、また買いに来てくれたの?」
萌美はにこにこと答える。
「いつになったらデートに行ってくれるんだよ」
「なによいきなり」
萌美は慌てたように答える。
「俺、たくさん買っただろ? 今月だってクレジットで限度額いっぱいまで買ったし、全部君にあげたし」
男が萌美の腕をつかむ。
「離して」
萌美は振り払おうとするが、男は離さない。
「ダメよ、前も言ったでしょ、副店長が……」
萌美は男にぼそぼそと告げる。
「お客様、どうされましたか」
異変に気づいた柚花が声をかける。と、男ににらみつけられた。