ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「お前には関係ねーよ!」
 声を荒げる男性に、柚花は思わず一歩をあとずさる。気弱そうな見た目とは裏腹に短気らしい。むしろ気弱だからこそ虚勢を張るのだろうか。だが今はそんなことはどうでもいい。

「落ち着いてくださいませ」
「俺は落ち着いてる!」
 怒鳴り声に、周囲の店舗から注目が集まった。

 どうしよう。
 焦る柚花の目に、スーツ姿の男性が見えた。
 あの人は、と驚きで声をなくした。どうしてあの人がここに?

「お客様、お話は私が伺いましょう」
 店に来るなり、男性が言った。

「なんだよ!」
 振り向いた男は、う、と言葉に詰まる。

 スーツの男性は見上げるほどの長身だった。仕立ての良いスーツは体のラインにぴったりしていてスマート。紺地に薄くラインの入ったネクタイが涼やかだ。流れる黒髪はサイドをタイトに仕上げられ、彼の細おもてのイケメン具合が引き立っていた。眉は凛々しく、薄い茶の瞳は澄んでいてクール。薄い唇にはこんなときでも余裕の笑みが浮かんでいる。

「た、助けてください!」
 萌美が男性にすがるような目を向ける。

「別室でお話をお伺いしてもよろしいでしょうか?」
「うるせえ!」
 男は萌美から手を離し、逃げるように立ち去った。
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