ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 それを見送り、柚花は男に頭を下げた。
「ありがとうござ」
「ありがとうございますぅ!」

 萌美が柚花を突き飛ばす勢いで強引に二人の間に割って入った。うるうると目を潤ませて、両手を胸の前で組み、しなを作って彼を見つめる。

「私、柴原萌美っていいます。喜勢丹の方ですかぁ?」
「いや、俺……私は」
 彼は柚花に目線を送り、柚花は頷いた。沙知絵を呼んでから彼を紹介する。

「柴原さん、中枝さん、こちらは今日からこのお店の店長代理をしてくださる安曇京吾(あずみきょうご)さんです」
 萌美は両手をグーにして自分の口元に当てた。

「こんな素敵な方が!? 私、仕事がんばります!」
「光栄です。ありがとう」
 京吾は苦笑した。
 沙知絵も自己紹介をして、お互いに頭を下げ合う。

「私を助けてくれた京吾さんが店長代理なんて、頼もしすぎます!」
 萌美はくねくねしながら言った。

 いきなり京吾さん呼び、と柚花は苦々しく思う。

「苗字で呼んでもらえますか」
 京吾は笑顔を崩さず言った。
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