ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「副店長も! 恋人を連れて来るの待ってますから」
 にやっとした笑みを柚花にだけ見せた。腹黒さがにじむその顔は、決して男性に向けられることはない。

「深雪山さん、この店の傾向を教えてくれますか」
「それなら私が!」
 萌美の言葉に、京吾は口元に微笑を浮かべる。が、その目は冷たい光を宿した。

「私は深雪山さんと話をしています。ご理解いただけますね」
 有無を言わせない口調だった。圧にひるんだ萌美は、はい、と答えてすごすごと立ち去る。
 眼力だけで言うことを聞かせる彼はすごい、と柚花は素直に感心した。

「エクスキューズミー」
 聞こえてきた声にそちらを見ると、外国人のお客様がいた。

 京吾が萌美に目で合図を送ると、萌美は目をうるうるさせて甘えるように言う。
「私、英語が苦手で……」

 京吾は視線を柚花に送り、柚花は頷いて前に出る。
 英語で対応する柚花を見て京吾はにこやかに目を細め、萌美はその後ろでぎりっと彼女を睨んでいた。



 その後はなんのトラブルもなく過ごし、一日を終えた。
 閉店時間を迎え、締めの作業をする。
 早番だった萌美と沙知絵はもう退勤しており、店には柚花と京吾の二人だけだ。

「今日は助けていただいてありがとうございました」
 柚花は改めて礼を言う。
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