ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 思うと同時に、かつての恋心が顔を覗かせる。
 研修時代、柚花は京吾に憧れていた。一緒に働けるだけで幸せ、と当時は恋を秘めていた。

 彼が海外に行くときにも……いや、だからなおさら告白などできなかった。
 ふられることはわかっていた。日本を発つときに女をふった苦い気持ちにさせたくはなかった。

 彼が教えてくれたブルーガーネットを買おう、と思ったのはそのときだった。

「私は次の正式な店長が決まるまでのつなぎですが、しばらくよろしくお願いします」
 京吾が改めて頭を下げ、柚花も頭を下げ返した。

「こちらこそお願いします」
 答えると同時に、少し苦いものが胸に浮かんだ。自分が店長に昇格させてもらえることはないんだ、会社は自分を頼りにしていない。責任を負わずに済む安堵と任せてもらえない落胆が入り混じった。

「ところで、さきほど懇親パーティーに恋人がと言っていましたが、どういうことですか?」
 尋ねられ、柚花は顔をひきつらせた。

「その顔は、よくない話のようですね」
「それが……」
 どう説明していいのかわからない。そもそも話すようなことなのだろうか。

「仕事に影響が出そうですから、教えてください」
 再度言われ、観念した。

「実は」
 柚花は説明した。
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