ブルーガーネットな恋 ～エリート上司は激愛を隠して部下に近づく～

　食堂で支配人と萌美に出くわし、彼氏などいないのに懇親パーティーに恋人を連れて行くことになってしまったことを。元カレのことは隠した。恋人をとられて嫌がらせをされているなんて知られるのはあまりに情けなさ過ぎる。

「そんなことがあったんですか」
　京吾は顎に手をあて、なにか考えるような姿を見せた。
　仕草が色っぽい、とつい見とれていたときだった。

「それなら私が彼氏になりましょうか」
「え！？」
　京吾の提案に、柚花は一瞬、なにを言われたのかわからなかった。

「相手の思惑にはまってあげる必要もないでしょう」
　嫌がらせで誘われていることに気づかれ、柚花は居心地が悪くなった。と思うと同時に彼の優しさに胸が熱くなる。

「……ご迷惑だと思いますのでお気持ちだけいただきます」
　つまりは偽装恋人になってくれるということで、だが、懇親会で恋人のふりをするなら周囲にも知れ渡ってしまうから、当分はふりを続ける必要が出てしまう。期間限定の店長代理でしばらくしたらこの店から離れるとはいえ、彼にとってめんどくさいことになるだろう。

「迷惑なら言ってません。深雪山さんが恋人になってくれるのは私にもメリットがあります。深雪山さんこそ、迷惑なら断ってください。私程度では彼氏には力不足でしょうが」
「そんなことありません！」
　思わず声が大きくなり、慌てて口を押えた。その様子に、京吾はふっと笑みをこぼす。

「では、当日は一緒に行きましょう」
「はい」
　優しい微笑に、柚花は頬を赤らめた。