ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「すごい、よく覚えてらっしゃいますね」
 若葉のような薄いグリーンのトルマリンだった。クローバーを象っていて、幸せを運んでくれそうな気がしたのだ。

「初任給で買った、と喜んでたから印象に残ってたんですよ。今日の衣装によく似合ってます」
「ありがとうございます」
 柚花はすっかり照れてしまって、それ以上のことを言えなくなってしまった。

 タクシーで会場のホテルに着くと、入り口で受付をすませて中に入る。
 落ち着いた色の絨毯にオフホワイトの壁、シャンデリアがきらめく下にはたくさんの人が談笑し、活気が満ちている。

「喜勢丹のほかのお店の方、たいていは店長が参加してらっしゃいます。あとはお店の本社の方がいらっしゃってる場合もあります」
 柚花の説明に、京吾は頷いた。

 柚花は視線に気がつき、周囲を見て固まった。
 女性陣の目が吸い付くように京吾に集まっている。

 無理もない、と自分も京吾を見る。

 今日の彼は一段と素敵だ。彼のスーツ姿を見慣れている柚花でも思わず見とれるほどだ。背筋の伸びた姿は堂々としていて、ほかの男性たちとはオーラが違う。長身を引き立てる紺のスーツの襟もとにラピスラズリのラペルピン。夜空のようなその宝石は控えめながらエレガントに彼を飾る。サイドに流す前髪はとても色っぽくて、透き通る明るい茶色の瞳はダイヤに匹敵する輝きを放つ。

「どうしました?」
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