ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「いえ……」
 京吾に聞かれ、見とれていました、なんて言えずに柚花は言葉を濁す。

 あの視線から逃れるために女連れのほうが良かったのだろうか。自分が隣にいるメリットがあるなら、それくらいしか思いつかない。
「あー、深雪山さん!」
 意地悪な声が響いた。萌美だ。隣には憲士がいた。

「京吾さんもご一緒なんですね。今日も素敵です」
「ありがとう」
 言われ慣れているのか、京吾は余裕の笑みを返す。

「初めまして、喜勢丹の関口憲士です」
「パリュールの店長代理の安曇京吾です」
 お互いに名刺を差し出して挨拶しあう。

 ただそれだけなのに、柚花はハラハラしてしまった。憲士が余計なことを言わないか、気になってしまう。

「深雪山さん、彼氏はどちらに?」
 にやにやと萌美が言う。

「私が彼氏ですよ」
 京吾が答えると、萌美はぽかんと口を開けて京吾を見た。憲士もまた驚いて彼を見る。

「やだ、冗談」
 すぐに気を取り直した萌美が言う。
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