ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「柴原支配人、本日はご招待ありがとうございます。ご挨拶に伺うのが遅れまして申し訳ございません」
 すかさず京吾が挨拶する。

「いえいえ、萌美のお相手をありがとうございます。萌美はあちらで食事でも楽しんで来なさい」
「はーい」
 萌美は不貞腐れて返事をして憲士を連れてその場を去った。

「安曇さんはニューヨーク五番街のお店を成功に導いた功労者と聞いてますよ。その手腕を見習いたいものです」
「私などはまだ若輩でございますから」
 そのまま京吾は進と話し始め、柚花は隣で相槌を打って聞いていた。

「深雪山さん」
 呼びかけられ、振り返ったときだった。

 萌美の姿が見えた直後、
「ケーキどうぞ」
 声とともに皿がぐいっと押し付けられた。

 え? と思ったときにはもう皿のケーキが柚花の胸にべしゃっとついていた。
「きゃ!」
「やだ! ごめんなさい!」
 柚花の悲鳴に萌美の謝罪が重なり、皿が床に落ちてがしゃんと割れた。

「私ぃ、おいしいケーキを深雪山さんにって思ってえ」
 両手をグーにして顎に添え、萌美が言い訳する。その目は楽しそうに輝いていた。
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