ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 それとも、海外ではこの程度のスキンシップは当たり前?
 そんなわけないはず、だけど、ならどうして?

 混乱する柚花にかまわずタクシーは順調に進み、目的地に到着する。
 降りた柚花は目の前の建物を見て驚いた。

 まさかは当たっていた。
 人気ブランドの路面店だった。

 古めかしいレンガ造りに金色のロゴの入った店名が輝く。ショーウインドウには黒いドレスを着たマネキンが堂々と往来を見下ろしていた。

 どうしてこの店に。
 尋ねることもできず、京吾に促されて車を降りる。
 店内に入ると、いらっしゃいませ、と落ち着いた声がした。

「好きな服を選んで」
「え……?」
 選んでと言われても、と柚花は店内を見渡す。

 広い店内にはおしゃれなラックがゆったりと並び、服もまたゆとりをもって並べられていた。
 おしゃれな小物がそれぞれの服のシチュエーションを演出し、マネキンはつんと顎をそらしてモードに見える。

 どれも自分には分不相応に見えてしまう。庶民の味方の量販店、ファッションセンターウエムラなら、きっと気軽に選べただろうに。
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