ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
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翌日、出勤した柚花は仕事に集中できずに困っていた。
京吾は遅番で、彼が来る時間が気になって何度も時計を見てしまう。
どうして彼はキスをしたんだろう。
唇に触れて、京吾を思い出す。それだけで胸がどきんと鳴った。
「京吾さん、早くこないかなあ」
呟く声に、柚花はびくっとした。
まるで自分のことをアテレコのように言われたのかと思ったが、声の主は萌美だった。
「安曇さんに用事ですか?」
「用事っていうかあ」
萌美はちらりと柚花を見る。
「彼氏って、嘘ですよねえ?」
柚花はうっと言葉に詰まる。京吾に申し訳ない気持ちがあって、彼氏です、と即答できなかった。
「仕事中にプライベートの話はやめましょう」
なんとかそう答えると、萌美はにやりと笑った。
「やっぱり嘘なんだ」
「そうじゃなくて」
「フラレたからってなりふりかまわないのはみっともないですよ。京吾さんかわいそう」
柚花は再び言葉に詰まった。その目に二人の老婦人の来店が見えた。
「お客様の対応をお願いします」
柚花が言うと、萌美はめんどくさそうに、ふん、と鼻を鳴らして老婦人たちの対応に行った。
ノートパソコンでメールチェックをしながら、聞くともなしに萌美の接客を聞いたときだった。
「クリーニングですか? この指輪だっさー!」
ありえない単語を耳にして、柚花は顔をそちらに向けた。