ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 老婦人たちは目を丸くして萌美を見ている。
 萌美は老婦人のものらしき指輪を掲げ、しげしげと眺めている。

「ふっるいデザイン! まあ、ファッションセンターウエムラで売ってそうな服着てるおばあさんにはお似合いでしょうけど。どうせならリフォームします? うちの会社、ジュエリーのリフォームもしててえ」

「柴原さん!」
 柚花が咎めるように声をあげると、萌美はムッとして柚花を見た。

「なんですか?」
「交代します」

「お客様とるんですか? ひどくないです? そんなに売上ほしくて必死なんですか?」
「柴原さんはあちらのお客様をお願いします」
 ちょうど、若い女性がショーケースを覗き込んでいるところだった。流行のおしゃれな服を着ている。

「仕方ないなあ。深雪山さんはおしゃれな人の対応はできなさそうですもんね」
 萌美は柚花に指輪を渡してその場を離れた。

「教育が行き届かず、申し訳ございません」
 柚花は二人の老婦人に深々と頭を下げた。

「いいのよ。ちょっとびっくりしたけど」
「いろんな人がいるものね」
 二人はゆったりとした笑みを見せた。

 服こそぺらぺらの安物だが、佇まいが上品だった。すっきりと整えられた髪はエレガントだし、お化粧はナチュラルで嫌味がない。

 一人はショートカットで、一人はウェーブボブだった。
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