ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「待ってるから。いつものカフェにいるよ」
「わかった」
 手を上げて去る彼を見送り、なんの話だろう、と首を傾げる。

「あ、憲士さーん!」
 萌美が彼を見つけ、なれなれしく腕をとる。
 憲士はにこやかな笑みを彼女に向け、なにかを話して二人でくすくす笑い合う。

 やな感じ。
 柚花は顔をしかめた。萌美はたいてい男性との距離が近いが、柚花の前ではことさらに憲士になれなれしい。憲士も憲士だ、自分の目の前でほかの女と仲良さげにするなんて。

 そのとき、柚花のスマホがぶるぶると震えた。
 表示を見ると、店長の佐島公洋(さじまきみひろ)だった。今日は店長会議で本社に行っているはずだった。

「はい、深雪山です」
「ごめん、会社で階段から落ちちゃって」

「大丈夫ですか!?」
「病院に運ばれたところ。足を複雑骨折しちゃってしばらく入院になる」

「大変。ゆっくり休んで直してくださいね」
 痛そうだ、と柚花は顔をしかめた。

「お店は君が居れば大丈夫だろうけど、人手は必要だよね。近いうちに本社からも応援が行くと思うから、よろしくね」
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