【受賞】ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 このままずっと副店長のままだったらどうしよう。
 ふいに訪れた不安は、すぐさま柚花を飲み込もうとする。

「ダメだ、このままだとネガティブになるだけ!」
 柚花はスマホを取り出した。
 宝石、流行、と打ち込んで、営業トークに使えそうな小ネタを必死に探した。



 金曜日、柚花は早番なので六時半には退勤を迎える。
 退勤前に柚花はバックルームから段ボールを運んできた。中身は翌日からのキャンペーンでつけるおまけだ。ショーケースの下にある棚にそれを入れる。

 今回のキャンペーンではオリジナルの小さなジュエリーケースをプレゼントすることになっていた。旅行にも便利なサイズで、かわいらしいデザインだ。
 棚の扉を閉めたタイミングで京吾に声をかけられた。

「深雪山さん、そろそろ上がって」
「はい」
 シフトはいつも彼とすれ違いで組まれている。

 初日以降は一緒に退勤することなどなかった。
 もし同じ時間に退勤なら、帰りにデートとかしてたのだろうか。

 そう思い、どきっとした。
 パーティーの日以降はスマホでも事務的なやりとりばかりで、まったく色っぽい話にはならない。休みは重ならないし、彼と二人で遊びに行くことなどありえないだろう。
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