ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 やっぱりあのときのキスは酔っていたがゆえのことだ。口説いて来たのも酔いのせい。彼はあれをなかったことにして過ごしているに違いない。

 ワンピースの代金は受け取ってもらえていない。だいたいこれくらい、という見当をつけて封筒に入れて渡そうとしたが、拒否されてしまっていた。

 もしかして、それがキスのお詫び代わりなのだろうか。最初から買ってくれるとは言ってくれてはいたのだが、なにもないのに買ってくれるなんて辻褄が合わない。

 自分は結局、なんとも思われていないんだ。
 わかっていたはずのことなのに、柚花の胸に鋭い痛みが走った。

「京吾! 久しぶり!」
 澄んだ声が響き、柚花は顔を上げた。

 見ると、美しい女性が京吾に抱き着いている。
 濃茶のロングヘアは手入れされてつややかで、スタイルの良い細い体にひと目で上質とわかるワンピースを着ている。

「爽子さん、どうしてここに!」
 京吾は驚きながら彼女から離れる。

「日本に来る用事があって、ついでに寄ったの」
「安曇さん、誰ですかぁ?」
 萌美が不審そうに尋ねる。

「知り合いですよ」
 京吾はごまかすように言ってちらりと柚花を見た。
 柚花はとっさに目をそらす。
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