ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 知り合い程度が抱きつくとは思えない。
 しかも、萌美にはいつもばっさりと切り捨てているのに、彼女にはそういう反応がない。

「私は彼と親しい関係なの」
 輝くような笑みを浮かべて彼女は言う。まるで萌美を挑発するかのようだ。

爽子(さわこ)さん!」
 咎めるように言うと、彼女は、ふふ、と笑いをもらす。

「お先に失礼します」
 柚花は声をかけて売り場を離れた。



 帰宅した柚花はコンビニで買ったお弁当を食べて、シャワーを浴びた。
 なにもする気力がなく、テレビをぼうっと見て過ごす。

 脳裏に浮かぶのはサワコと呼ばれた美しい女性。
 京吾とはお似合いだった。柚花より背が高く、派手な美人で並んだときに絵になる。
 彼女の前では自分はまるで石ころだ。ダイヤのような輝きを見せる彼女の前では、自分なんて敵わない。

『ダイヤの輝きは三種類あります』
 自分が新人だったころの京吾の言葉を思い出す。

 店に配属されたばかりのあの頃、彼は店長で自分は研修中の店員だった。

 京吾がイケメンであることに気がついてはいたが、それ以上に自分の仕事に対しての緊張と期待が胸を占めていて、恋どころではなかった。
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