ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「遅くにすみません。今大丈夫ですか?」
「はい」

「夕方に来た女性のことなんですが、誤解をしているといけないと思って。彼女は違うんですよ、あの人は――」
「私といるときに電話はダメよ」

「なにするんですか!」
 それで電話は切れた。
 あの女性と一緒にいる、その事実が柚花を打ちのめした。

 ああ。
 柚花はスマホを握り、胸に抱き込んだ。

 なんていうことだろう。
 胸が痛い。再会してたった一週間も経っていないというのに、自分はもう彼に恋をしている。

 違うんです、とは何が違うのだろう。
 自分は偽装の恋人なのだから、なんの言い訳も必要がないというのに。

 柚花はがくりとうなだれ、ベッドに横になった。テレビの内容など先ほど以上に頭に入らなくて、ただぼんやりと京吾と女性を頭に浮かべていた。
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