ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
「はい。お店は任せてください。お大事になさってくださいね」
 柚花は緊張とともに答えた。
 来週からはキャンペーンも始まる。

 こんなときこそ自分がしっかりしないと。
 柚花は深呼吸して、自分に気合を入れた。

 デパートは八時に閉店する。閉店作業を終えて八時半を過ぎ、ようやく柚花は退勤となった。
 更衣室で私服に着替え、柚花は息をついた。

 話って言うなんて、なんだろう。まさかプロポーズ……なんてカフェでするわけないか。
 苦笑して、柚花はカフェに向かった。

 明日は土曜日、店長がいないから朝一で出勤して準備しなくてはならない。早めに切り上げさせてもらおう、と思った。



 カフェはあたたかなオレンジ色のライトに照らされ、人で賑わっていた。カップルや女同士の友達連れ、笑いあう彼らの声がさざ波のように店に満ちている。

 きょろきょろと憲士を探した柚花は、奥の席に彼を見つけて驚いた。
 スーツ姿の彼の隣には、萌美がべったりとくっついている。

 どうして。
 呆然と立ち尽くした柚花に気づき、萌美がにたあっと笑った。

 気配で気がついた憲士が顔を上げ、柚花を見て顔を青ざめさせる。
 悪い予感を胸に、それでも柚花は憲士のいるテーブルへと向かった。
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