ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~



 夜、客足も途絶えたころだった。
 残業していた柚花は京吾とともに支配人の進に呼び出された。店を遅番の沙知絵に任せてふたりで支配人室へ行く。

 挨拶を交わしたあと、進は言う。
「今日はアクシデントがあったそうですね」
「はい」
 京吾が答え、ジュエリーケースの入った段ボールがなぜか食堂にあったことを伝える。柚花はうつむいてそれを聞いていた。

「お客様からもクレームの電話が入りました。今後はこのようなことのないようにしてください」
「申し訳ございませんでした」
「申し訳ございません。細心の注意を払ってまいります」
 柚花に続き、京吾も頭を下げる。
 柚花は悔しさに歯噛みした。自分のせいで京吾まで謝るはめになっている。

「原因はわかっているのかね?」
「調査中です」
 状況の報告と謝罪を終えて支配人室を出ると、柚花は京吾に頭を下げた。

「申し訳ございません。私のせいです」
「だけど、君は昨夜のうちに棚に入れておいたよな?」
 京吾の目の前で片付けていたから、彼もそれは知っている。

「はい。どうして食堂に移動していたのかわかりません」
 京吾は考えこむように顎に手を当て、それから柚花を見た。
< 62 / 100 >

この作品をシェア

pagetop