ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~

***

 柚花と京吾を見送った沙知絵は、なんだか不穏な感じがするなあ、と不安な気持ちになった。
 キャンペーンのミスの話なのだろうか。
 わざわざ休みの日に出勤してまで、社員はご苦労様なことだ。

「いらっしゃいませ」
 人影に気がつき、沙知絵は声をかける。

「萌美はいますか」
 暗い顔をした男はそう尋ねる。

「本日はお休みをいただいておりますが、どのような御用件でしょうか」
 予約の品を取りにくるなどの引継ぎは受けていない。

 ふと、彼はよく萌美から宝飾品を買っている男性だと気がついた。そして、萌美にいつデートをしてくれるんだ、と言ってもめた男性だ。

「だったら、副店長の女を出せ」
「申し訳ございません、ただいま席を外しております」
 ただならぬ雰囲気に、柚花がこの場にいなくて良かった、と沙知絵は思ったのだが。

「嘘だろ」
 男性は暗く燃える目で沙知絵をにらみ、彼女は思わず一歩後ずさった。

「萌美と副店長を出せ!」
 男性の叫びが、フロア中に響き渡った。
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