ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~

***

 なによ、あんなことくらいであんなに怒って。
 萌美はぷりぷりと歩いていた。

 従業員用のエレベーターで一階に降りて、どうしようかな、と考える。

 このまま帰るのは気分が悪い。
 せっかくここまで来たのだから、そこらをぶらついて帰ろうか。かわいい服を買って、美味しい物を食べて。話題のスイーツ店が近くにできたはずだ。

 二基あるエレベーターのもう一基の到着音が響き、扉が開いた。
 なんとなく振り返ると、そこには柚花と京吾がいた。

「柴原さん」
 京吾の険しい声が耳に届く。
 とっさに萌美は逃げ出した。

「待ちなさい!」
 京吾が叫び、追って来る。その後ろに柚花が続く。

 なんで追って来るのよ!
 萌美は焦った。

 つかまったらきっとこっぴどく怒られるに違いない。
 そうだ、お店に逃げれば。客の前で怒るようなことはしないはずだ。
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