ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 柚花は硬直した。逃げることはおろか、声をあげることもできない。
「きゃああ!」
 近隣の女性店員が悲鳴を上げた。

 刺される!

 目を閉じることすらできない柚花の前に、影が割って入った。

 京吾だ。
 彼は突進する奥長の腕をつかんでぎりっとねじり上げる。

「いてえ!」
 からん、と音がしてナイフが落ちる。

 京吾はそのまま腕をねじり続け、奥長は痛みに体勢を崩す。京吾は彼を床にねじ伏せ、押さえつけた。
 柚花は少しでも力になろうと奥長の脚を押さえた。

「ふざけんな、離せ!」
「警備員を」

「呼びました!」
 スマホを片手に、沙知絵が現れた。騒動は店からも見えていたようだ。

「離せって言ってるだろ!」
 もがきながら、奥長は萌美を見る。
 萌美はびくっと震えて一歩を下がった。

「萌美、なんで逃げるんだよ」
 萌美は黙って、ただ首を横に振る。
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