ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 憲士は今さら京吾に気がついたようで、驚いたあとに京吾を睨みつける。

「こいつは俺と付き合っててさ。行き違いがあって別れたみたいになってただけだ」
「あんなにはっきり別れ話をしたのに」
 柚花は呆然と憲士を見る。

「彼女を振ったバカ男はこいつだったのか」
 京吾の声には明らかな侮蔑があり、柚花は目を丸くして彼を見た。
 彼は暗く目を光らせて口元は嘲笑に歪み、なんとも言えない凄みがあった。
 こんな様子の彼など、今まで一度も見たことがなかった。

「おかげで俺は彼女を手に入れることができた。礼を言う」
 柚花の肩を抱き、京吾は言った。

「柚花、無理すんなよ。ほんとは俺が好きなんだろ? いつも俺のために部屋を掃除したり俺の売り上げに貢献してくれたりしたじゃないか」
「過去のことよ」
 柚花はきっぱりと言い切った。

「恋人だから、少しでもあなたの役に立ちたかった」
 言いながら、ぼろぼろと涙があふれる。
 彼にふられてから今まで、まったく泣かなかったというのに。

「好きだった。だけど、あなたは利用価値のある私が好きなだけだった。今すごく、よくわかった」
 悲しみとも悔しさとも言えないものが胸に湧いて、涙となってこぼれていく。
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