ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 どういうこと?
 柚花は内心の動揺を見せまいと、ただ笑顔で様子を窺う。

「会長夫人がお忍びで店にいらっしゃるとは」

 会長夫人!?
 柚花は驚いて夫人を見た。木藤は確かに会長と同じ苗字だ。

「お忍びってほどじゃないわよ、ねえ」
 二人はくすくすと笑い合う。

「安曇さん、お久しぶり。ニューヨークでネックレスを選んでもらって以来かしら」
 ウェーブボブの髪の女性、真理子が答える。

「そうですね。あのときは条件が多くて大変でした」
 京吾が答えると、真理子はくすくすと笑った。

「この前もお店にいらっしゃいましたよね?」
「テレビでね、社長がこっそりお店の様子を見に行くやつを見たの。面白そうって二人で盛り上がっちゃって」

「それで変装していらっしゃったのですか」
「変装じゃないわよ。彼女、夫がファッションセンターウエムラの会長じゃない? だからまずウエムラに行って服を見立て合ったの。それからこっちに来たんだけど」

「ウエムラなんかって面と向かって言われて落ち込んでしまったわ。世間でどういわれてるからはわかってるつもりだったけど」
 ショートカットの婦人が苦笑をこぼした。
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