ブルーガーネットな恋 ~エリート上司は激愛を隠して部下に近づく~
 翌日の土曜日は開店に間に合わせて出社し、店長がやる予定だった仕事を本社の指示に従って処理した。

 月曜日には本社から助っ人がくるとメールで連絡が来て、ほっとした。店長業務はともかく、人が足りなくなるのは痛い。今日だけ乗り越えれば明日からはきっとなんとかなる。

 来週からはキャンペーンもある。社員なら誰が来ても一応は店舗業務の経験があるはずだし、まったくの素人よりは戦力になるはずだ。もちろん、他店舗で働いているような即戦力が来てくれるのが一番ありがたいのだが。

 助っ人の名前は書かれていなかった。急な決定だったから書き漏らしたのだろう。了解とともに誰が来るのかを尋ねる返事を出した。

 一通りのことを終えると、ふう、と息をついた。
 昨夜は失恋したのだが、なぜかまったく涙は出なかった。
 すれ違いに別れを予感していたのもあるが、自分が薄情に思えて、別れ以上に心を重くした。

「深雪山さん、大丈夫ですか? やっぱり店長がいないから……」
 沙知絵に聞かれ、柚花は微笑を返した。

「大丈夫。店長業務は今までにも店長がお休みの日にやったことあるし、ここで頑張れば次の人事異動で店長に昇格するかもしれないし」
 冗談めかして言うと、沙知絵はホッとしたように笑顔になった。

「仕事に生きるしかないからですかあ?」
 萌美が横から口を出し、柚花の笑顔がひきつった。

「仕事は大事だから」
 無難に答え、柚花は仕事に戻った。

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