シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
「世莉さん、住所と名前をご自分で書けますか?」

「あ…」

書けないことはない。
しかし指に力が入らないので、かなり汚い字になる。 

汚い字を見られたくない。

世莉は咄嗟に、目でそれを訴えるように賢雄を見た。

「代筆じゃダメすか?」
それを受けた賢雄が問いかける。

「大丈夫ですよ!
じゃあ…お兄さんに、代わりに書いてもらいましょう!」

世莉が頷き、賢雄が代わりに書いた。

住所を書き“蓮上 世莉”と書く。
するとクキカワが「名前の横に“代筆者・兄”って書いて、お兄さんの名前を書いてください」と言われた、賢雄。

代筆者・“兄”と書こうとして、止まった。

ふと“夫”って書けたらなぁ……と、頭の中をよぎったからだ。

「けんくん?」
「にぃに?」

「え?あ…ごめん」
賢雄は頭を横に振り“兄・蓮上 賢雄”と書いた。


そしてオギノメとクキカワが退出し、玄関先まで爽子が送る。

「では、来週からよろしくお願いします!」
「皆さん、仲良いですね!
特に、世莉さんとお兄さん!」

「あ…えぇ…」
少し曖昧な返事をする、爽子。

「ん?蓮上さん?」

「あ…いえ!
両親が亡くなってから、三人で頑張ってきたので!」

「ですよね!
でも、素敵です!
三人きょうだい仲良いってこと。
ウチの子は二人の兄弟ですが、喧嘩ばっかです(笑)」

「そうなんですね!
でも、喧嘩するほど仲が良いって言いますよ?(笑)」


爽子がオギノメとクキカワを見送り、リビングに戻ると………

頭を優しく撫でながら、賢雄が世莉を愛おしそうに見ていた。

「………」

爽子が少し声を張り、声をかけた。

「なんだか疲れたね…(笑)」
「だな(笑)」
「うん…」

「夜ご飯どうする?
たまには外食する?」

「世莉が良いなら、俺は構わねぇよ!」
「いいよ!
ねぇねが楽になるし」

「じゃあ、着替えようか!」

爽子と世莉が、世莉の部屋に入る。
「どれ着る?」

「そのブルーのやつ。
ねぇねが買ってくれたから!」

「フフ…!
あ!じゃあ……ちょっと待ってて!」 

世莉を着替えさせ、思い出したように言って、世莉の部屋を出た爽子がすぐ戻ってくる。

「このネックレス、あげる!」

そう言って、世莉の首につけた。

「わ…可愛い!」
「でしょ?
フフ…やっぱ、せっちゃんに合う!」

「フフ…ありがとう!ねぇね!」
「どういたしまして!
……………ん?せっちゃん、これ…」

ネックレスをつけた後、世莉の髪の毛を整えていると…
爽子はあることに気づいた。

「これ、ピアス…よね?
あけたの?」

世莉の右耳に、ピアスがついていた。
しかも、見たことがあるピアスだ。

「あ…にぃにがね、ピアスあけよって言って。
今、流行りなんでしょ?
兄妹でピアスつけるの」

(そんな流行り、聞いたことないし…)
「………これ…ペア…よね?」

爽子は、世莉のピアスに触れた。

(確か、けんくんも同じのつけてた……)
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