シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
地下駐車場に駐めている、賢雄のセダン車。

爽子が近づくと、運転席から賢雄が出てきた。
「爽姉、大丈夫?」  

「え?」
心配そうに見下ろす賢雄に、フリーズする。

「来るの遅かったから、なんかあったのかなって」

「あ…大丈夫よ!
鍵を変な所に置いてて、探してたの。ごめんね!」

「珍しい(笑)爽姉が鍵を変な所に置くなんて!
車椅子、俺がトランクに乗せるから乗ってて!」

昔から変わらず優しい、賢雄。
たとえ世莉に特別な感情を持っていても、姉である爽子への気遣いも忘れない。

だからこそ、賢雄や世莉には“本当の意味で”幸せになってほしい。

爽子にとって、賢雄と世莉は“生き甲斐”なのだから………!

そんなことを考えながら、爽子は後部座席のドアを開けて世莉の隣に乗り込んだ。

回転寿司に行くことにし、賢雄が車を走らせる。
駐車場の身障者用の所に駐め、賢雄が運転席を降りた。

「………よし!世莉、おいで?
車椅子、乗るよ〜」
世莉が賢雄の首に腕を回す。

「はい、行くよ?」
「うん」

軽々と抱えた賢雄が、横につけた車椅子に移乗させた。

そして店内へ入った。
賢雄がアプリで来店予約していたので、そのまま席に通された。

カウンター席に、世莉を真ん中にして並んで座る。
「せっちゃん、いつもみたいに私と食べようね!」 
「うん!」

「じゃあ…せっちゃんの好きな……」
「サーモン!」

「フフ…そうね!」

「爽姉、茶碗蒸しは?」

「あ、いる!頼んどいて!」
「ん!」

「あ…にぃに、私も……!」

「うん。世莉は、俺と一緒に食べような!」

「でも、一人分食べれるよ?」

「うーん…でも、その分寿司が食えなくなるだろ?
マグロもエビもタイも食べれなくなるよ?」

「………」

「フフ…な?
俺と一緒に食べよう?」

頭をポンポンと撫でると、世莉はコクンと頷いた。

茶碗蒸しが来て、いつものように賢雄が先に世莉に食べさせる。

「ん、あーん!
――――――美味し?」

「うん、美味しい!
でも…」

「でも?」

「ねぇねの作る茶碗蒸しが、一番美味しい!」

「え!?//////」

「フッ…!確かに!!」

世莉と賢雄の言葉に、爽子は顔を赤くし嬉しそうに笑うのだった。 
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