シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
食事を終え、車に戻る。
爽子が会計している間、賢雄と世莉は車で待っていた。

「にぃに」

「んー?」

「髪の毛、カットしに行きたいんだけど…」

「え?
まだ三ヶ月位しか経ってねぇよ?
いつもは、半年に一回くらいだろ?」

「うん。
できる限り、髪の毛短い方がいいかなって…」

「どうして?」

「ヘルパーさんが洗いやすいように」

「そこまでしなくても……
気を遣う必要ねぇよ?」

「それに、夏になって暑くなってくるし!」

「わかった!
一歩(はじめ)に連絡してみる!」

「え?明日でいいよ?」

「大丈夫!
――――――あ、もしもし一歩?
世莉のカットお願いしたいんだけど!
………うん、うん。
………ありがと!
世莉、明日カットしてくれるって!」

「ほんと?良かった!」


そして次の日。
賢雄は世莉を連れ、一歩の働く美容室に向かった。

「こんに……あ、賢雄!世莉ちゃんも!
いらっしゃ〜い!」

「ん」
「こんにちわ!」

一歩は、賢雄の高校からの親友。
そのため、世莉も心を許せる相手だ。

「今回は早いね!」

「あ、はい。
ちょっと、色々事情が…」

「そっか!
じゃあ、シャンプー台行こうか!」

「はい」
一歩が、シャンプー台まで車椅子を押す。
賢雄が後ろからついてきて、シャンプー台に世莉を移乗させる。

「なぁ、賢雄」
それを見た一歩が声をかけた。

「んー?
ちょっと待って。
世莉を移してから」

「いや、そうじゃなくて!」

「ん?」

「俺が世莉ちゃん、運ぶよ?」

「は?」

「要はお前みたいに、抱っこすりゃあいいんだろ?」

「すりゃあいいって…
そんな問題じゃねぇよ!」

「世莉ちゃん、俺が抱っこしてい?」

「え……あ…は、はい」

「世莉、嫌そうじゃん!」
「は?緊張してるだけだよね?
大丈夫!
絶対!落とさねぇし!」

「当たり前だろ!?
世莉を怪我させたら、殺るよ?」

「世莉ちゃん、俺の首持って!」 
世莉が一歩の首に腕を回す。

「あげるよ〜」
声をかけて、抱き上げた。

一歩は「軽っ!」と言って、シャンプー台にゆっくり下ろした。

「世莉ちゃん、軽いな!」
「そりゃな(笑)
俺達の半分以下の重さしかねぇもん」

「半分以下!?」

それから髪の毛を洗い、ショートボブにカットしていく。

その間賢雄は、ソファに座り世莉を見ていた。

「このピアス、賢雄とお揃?」

「え?はい」

「へぇー!相変わらず仲良いね!」

鏡越しに一歩が微笑み言った。
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