シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
「一歩さんは、お姉さんとお揃いのピアスしてないんですか?」

「え!?
姉貴と!?
ない、ない!(笑)」

「でも、今の流行りなんですよね?」

「は?
ペアピアスが?」

「はい。
兄妹でつけるのが、流行りってにぃにが言ってました」

「賢雄が?そんなことを?」

「はい」

「そうなんだ……(笑)」
そう呟いて後ろを振り向き、賢雄を意味深に見た。

そしてアシスタントにシャンプーを頼み、他の作業をしながら一歩が賢雄に声をかけた。

「なぁ、賢雄」
「ん?」

「世莉ちゃん、口説いてい?」

「………」

「………」

「………は?」

フリーズした賢雄が、一歩を鋭く見た。

「大事にするよ?
絶対傷つけないし、一生支える!」

「支えるなんて、簡単に言うんじゃねぇよ!!」
一歩にグッと顔を近づけ、凄んだ。

「簡単に言ってねぇよ……!
ただでさえ、世莉ちゃんはハンディキャップがあるんだから」
特にビビることもなく一歩は、賢雄を鋭く見返した。

そこに「すみません、シャンプー終わりました…」とアシスタントが声をかけてきた。

「あ…ごめんね!」
少し怯えているアシスタントに微笑み、賢雄の耳に顔を寄せる。

「つか、お前の許可なんか必要ねぇよな。
要は“世莉ちゃんの気持ち”が大事だし。
お前は“ただの兄貴”なんだから……!」

そう、耳打ちをした。

「世莉ちゃん、ごめんね!
はい、抱っこするね!
掴まって!」

触るな…
触るな…
触るな…
俺の世莉に触るな……!!

賢雄は拳を握りしめ、一歩を睨み付けていた。


「――――はい!世莉ちゃん、どう?」

「はい、ありがとうございます、スッキリしました…!」
セットが終わって、確認する。

鏡越しに一歩に微笑むと、すかさず賢雄が近づいてきた。
「世莉、おいで?」

抱き上げた賢雄が「可愛い!」と微笑む。
すると世莉も嬉しそうに笑い、車椅子に下ろされた。

会計をして美容室を出ようとすると、一歩が世莉を呼び止めた。

「世莉ちゃん、今度俺とデートしない?」

「え?デート?」

「うん!
飯でも食いに行こ?
それか…ケーキとか?
それとも、どっか行きたい所ある?
何処でも連れてってあげるよ!」

「えーと……」

「一歩、やめろ!
世莉を困らせるな!!」

「は?賢雄に言ってねぇし!
にぃには黙ってろよ!!」

「は?」

睨み合う賢雄と一歩。

「あ、あの!」
そんな二人を、世莉が切なく見上げていた。
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