シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
次第に雨足が強くなっていく。

「世莉ちゃん、車椅子にしっかり掴まってて!
ちょっと、走るから!」

着ていたシャツを脱いだ一歩が、そのシャツを世莉の頭を覆うように掛けた。
そして、車椅子を勢いよく押す。

急いでマンションに戻り、エントランスに入る。

「ごめんね、かなり濡れたね…
早く家に入って拭かないと!
風邪ひいたら、大変だ!」

「一歩さんこそ、びしょ濡れですよ!
早く家に……!!」

「俺は大丈夫だから!
世莉ちゃんこそ、戻ってシャワー………って、無理か…
あ、でも確か…今日は、夕方に風呂入れにヘルパーさん来るんだよね?
何時だっけ?」

エレベーターに乗り、世莉に問いかける。

「5時です」

「5時か…
少し時間があるな…
どっちにしても、帰って着替えないとだ」

家に着き、一歩が電動車椅子に移乗する。
「よし!大丈夫?」

「はい、ありがとうございます」

「ううん!
ごめんね、連れ出して…
早く着替えて、拭かないと!
俺がしてあげたいけど、さすがにそれは……ね?
じゃあ、俺帰るね!」

「え?待ってください!
タオル、持ってくるので!」

頭をポンポンと撫でて、小さく手を振る一歩。
世莉は呼び止め、タオルを取るため電動車椅子を動かす。

「ほんとに大丈―――――」
世莉が中に入ってしまい、しかたなく玄関で待つ。

世莉が戻ってきて、タオルを渡してきた。
「ありがとう」

「いえ、こちらこそすみません…」

「ほら、世莉ちゃんも拭かないと!」
一歩が世莉の持っていたタオルを取り、髪の毛や顔を拭く。

「………あ…すみません…」
乱れた髪の毛から覗く、世莉の顔が色っぽい。

「……/////」
一歩は無意識に頬に触れ、撫でた。

「え?一歩さん?」

「世莉ちゃん」
世莉を見据える、一歩。

「はい」

「俺、世莉ちゃんのこと、好きなんだ…!」

「…………え?」

「世莉ちゃんに出逢った時からずっと。
初めて逢った時、世莉ちゃん小学生だったのに“可愛い〜!”って!」

「あ…」

「だから、俺のこと“一人の男として”考えてくれない?
返事は待つから!」

「……でも…私……」


「介護が“簡単だなんて思ってない”
でも世莉ちゃんのためなら、一生苦労することになっても、ずっと傍にいて支えたい……!」

そう言って一歩は、出ていった。
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