シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
世莉が腕を引っ込めた勢いで、針が抜ける。

「あ!蓮上さん!動かないでください!!」
慌てて、看護師が言ってくる。

「え…でも……」
(もう嫌、怖い!!!)

世莉は怖くなり、イヤイヤと何度も首を横に振った。

「すみません、他の人に代わってもらってくれません?」

すると賢雄が、看護師を睨み付けていた。

「え?あ…」

「つか、出来ねぇなら、出来る奴を呼んで代わってもらえよ!」

「でも、蓮上さんの血管がわかりずらくて」

「は?世莉がわりぃのかよ!?」

「いえ、そうゆうわけでは……」

「だいたい、お前プロだろ?
血管がわかりずらくても、完璧にやれよ!」

「私、新人で…今年からなんです…」

「だから?」

「え?」

「そんなの、患者には関係ねぇし。
患者にとって新人だろうが、ベテランだろうが、みんな同じプロの看護師なんだ。
出来て当たり前なんだよ!!
出来ねぇなら、世莉を練習台なんかにせずに、まず出来る奴を呼んで、あとから一人で人形かなんかで練習しろ!!」

賢雄の怒号に、他の看護師が駆けつけてくる。

「蓮上さん!?どうされました!?」

「こいつが、世莉を練習台にして血管傷つけたんだよ!!」

「え?
―――――蓮上さん!?
すぐに、処置を……!!」
世莉の腕は、真っ赤に腫れていた。

「蓮上さん、申し訳ありません。
今日は左腕はもう無理なので、右腕で取らせてください」

看護師がすぐにガーゼで保護し、処置をして世莉に再度伺いを立てる。

幸い大事には至らなかったが、世莉は完全に心を閉ざしたように賢雄に抱きつきしがみついた。
そして、イヤイヤと首を横に振る。

「来月じゃダメすか?」
賢雄はそんな世莉を切なく見つめて、頭を撫でながら看護師に言う。

ただでさえ、怖がって説得するのが大変なのに、更に怖い思いをさせられたため、もう今日は受け入れないだろう。

「先生に確認します!」

そして、看護師とともに主治医が来る。

「蓮上さん。申し訳ありませんが、一ヶ月は待てないので、お手数ですが今右腕で取らせてもらうか、来週来ていただけませんか?」

世莉の足元にしゃがんで、世莉の手を握り伺いを立ててきた。

「去年みたいに、異常が早く見つかることがあるので、できる限り一定期間ごとに検査したいんです」

「…………今日…しま、す…」

「そうですか!
ありがとうございます!
その代わり、あと一回で痛くないようにするからね!」

主治医が目伏せして、違う看護師が右腕で血管を取ったのだった。
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