シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
安心しきった、無防備な世莉の寝顔。

可愛くて、愛しくて、胸が苦しくなる。

 
“できれば、にぃにに傍にいてほしかったの…!”

世莉の言ってくれた言葉を思い出す。


「…………世莉…」

「………」

「なんで、そんな可愛いんだよ…」

「………」

「そんな無防備にしてっと、俺みたいな奴に襲われるぞ…?」

「………」

「ほら、起きろよ…」

「………」

「起きねぇと、キスすんぞ?」

「………」

「………」

「………」

賢雄は親指で、世莉の口唇をなぞった。
ゆっくり、顔を近づけ口唇を重ねた。

一度重なって、離れる。

「ヤベェ…止まんねぇ…!!」

いつも世莉を寝かせてからキスを落として眠りについている、賢雄。 
世莉への気持ちを自覚してから、毎晩行っている。

最近、キスするだけでは満足出来なくなっていた。

今度は、口唇を重ねて貪った。
夢中で貪っていると、さすがに世莉も目を覚ます。
「んん…」

「………」

「………え…//////にぃに…?」

「あ…
世莉、ちょっと休憩しよう?」

「う、うん…」

「ちょっと待ってな?
車椅子、出すから」

頭をポンポンと撫でて、運転席を出ていく賢雄。

世莉は放心状態になっていた。

賢雄の顔があまりにも間近にあり、色っぽくてほんのり赤くなった表情だったから。

こんな表情を、つい最近見たことがある。

「…………あ…一歩さんと、同じ……」

一歩に告白されたあの時の、一歩の表情と同じだったのだ。


「はい、世莉!
車椅子行くぞ?おいで?」

いつものように抱き上げ、車椅子に移乗させる。
車椅子を押しながら「トイレ行っとこうな!」と言う。

多目的トイレに向かい、便座に移乗させる。

「世莉。終わったら連絡して?」

多目的トイレを出ていく賢雄の背中を見ながら、世莉はある事を考えていた。

「………にぃにって、恋人さんいるのかな?」

そういえば、そんなことを聞いたことがない。

賢雄が中・高校生の頃は、女子といるところを見たことがある。

でも大学生になった頃から、友人といるところさえ見たことがない。

むしろ、いつも世莉の傍にいた。


「もしかして、私のせい……?」
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