シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
「世莉、どうした?
疲れちゃった?」

「さっきの司会者の人、勘違いしてたね」

「え?
…………あー“夫婦”ってやつ?」

「うん」

「それで?」

「どうして否定しなかったの?」

「否定したくなかったから」

「え?」

「嬉しかったから」

「にぃに…」

「世莉……みたいな女を、嫁さんに出来たらなぁって思ってたから」

本当は“……みたいな”ではなく“世莉を嫁にしたい”と言いたかったが、なんとなく言いづらくて敢えてそう言った賢雄。

「………」

「世莉は、嫌だった?
俺が“旦那”って言われるの」

「ううん」
首をフルフルと横に振る、世莉。
続けて「私、にぃにのこと大好きだから」と言った。

「………」

「……ん?にぃに?」

賢雄は思う。

きっと、俺の“好き”と世莉の“好き”は全く別物なんだろうな……と。

そう思うと、なんだか悲しくなる。

「ううん!
俺も好きだよ!」

“何を失っても、世莉がいれば何もいらないくらいに………”

そして「行こうか?」と車椅子を押した。


車に乗り込んで15分程すると、世莉は眠ってしまった。

それを横目で見て、賢雄は「ほんっと、無防備だよなぁ…」と呟く。

「俺の気も知らないで……」

ツンツンと、頬を突付いた。


世莉は、俺が“世莉を一人と女として愛してる”って伝えたら、何て答えるのだろう。

拒否?
それとも………受け入れてくれる?

でもそうなった時、俺はどうするのだろう。

世莉とどうなりたいのだろう。

「あーーー!!!もぅー!!!」

思わず声が出て、世莉が「んん…」と目を覚ました。

「あ、起きた?」

「あ…ごめんなさい…また寝ちゃった…」

「ううん!
俺が連れ回したんだし」

「でも、楽しかった!」

「そう?良かった!
世莉、夜ご飯何食おうか?」

「にぃにが決めて?
私、あんまり食べれないし」

「肉食いたいんだよなぁー」

「うん、いいよ!」

「じゃあ…焼肉行くか!
商品券もあるし!(笑)」

「うん!
でも、ねぇねに悪いね…
二人だけで美味しいお肉…」

「フフ…ほんと、優しいな!
じゃあ、爽姉を拾って食べ行こ?」

「うん!」

世莉は微笑み、大きく頷いた。
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