シスコンでは終われない〜俺と妹と…時々姉〜
ランチの時間になり、世莉は冷蔵庫から爽子が用意してくれた弁当とフルーツヨーグルトが入ったお椀を取り出した。

膝の上に置いてテーブルに移動してお椀を置き、弁当は電子レンジに入れた。


〜〜〜♪♪
電子レンジのブザー音が鳴り、取り出した。

「アチチ…」
左手で弁当を取った。
右手は、あまり力が入らないからだ。

そして、手を合わせ食べ始めた。

箸が上手く使えない世莉は、フォークを使って食事をする。
(握ることが出来る程度までしか、回復してないから)
ゆっくり食べながら、実平の勤めるヘルパー事業所のパンフレットを見ていた。


その頃――――爽子は手術中。
賢雄は、同僚(といっても、大学院修了後入社した賢雄の方が年齢は上)と近くの定食屋でランチをしていた。

「蓮上さん、行きましょうよー!」
同僚に、飲み会に誘われている賢雄。

「悪いけど、妹の介護があるから無理」

「あー、そうでしたね…!」 
「確か、二十歳の妹さんがいるって言ってましたよね!」

「うん。
“俺にべったりだから”終わったら、早く帰ってあげないとでさ!」

賢雄は“ある意味”世莉が障がい者であることが、都合がいいと思っていた。

何故なら、世莉の介護を理由にどんな誘いも断ることができ、世莉の傍にずっといることが出来るから。

そして世莉を独占し、閉じ込め、誰の目にも触れさせずに済むから。


午後の仕事も終え、自宅マンションに帰る。
ちょうどエントランスに爽子がいて、エレベーターに向かっていた。

「―――――爽姉!」

「ん?けんくん!おかえり〜」
「爽姉も!お疲れ!」

エレベーターの扉が開き、二人は乗り込んだ。

「今日、暑かったぁー」
「そう?」

「今はそうないけどさ!
昼間!」
「そこまでないわよ?(笑)」

他愛もない話をしていると、自宅のある階に止まる。
エレベーターを出て、自宅に向かった。

鍵を開けようとした爽子。
「ん?あれ?」
首を傾げる。

「ん?爽姉どうした?」

「けんくん、ちゃんと鍵閉めて出た?」

「は?当たり前じゃん!
世莉がいるんだから!」

「でも、鍵…開いてる…」

「は?」

ガン!!と玄関ドアを開け「世莉!!!」と呼びかけながら、賢雄が慌てて中に入った。
爽子も後に続いた。
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