あなたの側でしか輝くことができない

EP1

タタタタタタタタ。

タタタタ。

タタ。

私は、スクールバックを肩に掛け、強風によって捲れる短いスカートを必死に抑えながら、焦る気持ちを誤魔化すかのように走り続ける。

自分がどこに向かっているのか、

これから自分に何が起きてしまうのか。

そんなことを考えることすら嫌だった。

そんな時は、音楽を聴こう。

そう思い、所々ボロボロに破けているスクールバックの中身を開けた。

イアホンが中々見つからない。

普段からバックを整理整頓していない自分が悪いのだが、今の私には、そんなことを考える余裕もないほど、不安に襲われていた。

それほどに私の人生において音楽は必要不可欠だったのだ。

時は遡り私が5歳の時。

まだ自分の人生について何も考えておらず、

これから自分の人生が波乱万丈な人生になるなんて微塵も感じていないそんな時。

私は、公園にある台の上に立っていた。

「ミュージックスタート。」

そう大きな声で叫ぶと、公園にいた友だちとその親たちが一斉に私の方を向いた。

この瞬間、私は、なんとも言えない高揚感を感じたのを覚えている。

「♪ララララララララ。」

歌いながら、踊ると、そこにいた皆んなが笑顔になった。

「ありがとうございました。」

パチパチパチパチ。

パチパチパチパチ。

パチパチパチパチ。

「愛ちゃん。本当に歌うまいね。」

「本当に。」

「あいちゃん、しゅごいね。しゅごいよ。」

私は、鼻高々に、

「しょうでしょ?わたしうただいしゅきなんだもん。いつでもうたってあげるんだから。」

と言っていたような気もする。

この時からわたしは、人前で歌うのが大好きだったのだ。

数年後にあんなにも大きなステージでこの時よりももっと大勢の人々の前で歓声を受けながら歌うことになるなんてこの時のわたしは、知らない。

だがこの時知った音楽を奏でることの楽しさが私にこれから起きるさまざまな不幸を助けてくれることになるのだ。

ザワザワザワザワザワザワ。

ガヤガヤガヤガヤガヤガヤガヤ。



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