「お前を愛することはない」私も魔獣以外愛する気はありませんの。お揃いですわね
「狼さん。今日はあなたに、お別れを言いに来ましたの」
「ガウ?」
「婚約者から、好きになれないと言われてしまいましたわ……」

 先程起きた出来事をさっそく打ち明ければ、獣はグルルと唸り声を上げて不満そうにする。心優しきクロエを悲しませる男など、さっさと別れたらいいんだとでも言いたそうな態度を目にした彼女は、狼を落ち着かせるように優しく首元を指先で撫でつけた。

「でも、わたくしだって。彼よりもあなたのことが好きですもの!」
「ガルル……」
「このまま婚約破棄になったとしても。わたくしは狼さんにさえ会えれば、それで構いませんのよ?」
「ガウ、ガウ……」

 それは駄目だと言うように、獣は何度も首を振る。
 彼には何度も婚約者と関係が進展しないことを相談していた為、諦めるのはまだ早いと勇気づけてくれているのかもしれない。

 それはとてもありがたいことだと感じながら、クロエは言葉を重ねる。
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