バイ・アンド・バイ
「何かあったんですか?」
さすがに黙って作業なんて出来なくて、手に持っていた札束を一旦レジの中へ戻し、千瑚さんに問うてみる。
「弥生ちゃんごめんねぇ騒いじゃって。実はねー…」
めそめそと千瑚さんが教えてくれた現状。
どうやら、私たちの販売する商品を保管している専用倉庫の扉の前で、全身黒ずくめの男が2時間も前からぐったり倒れている……との事。
「明日新作のDP(ディスプレイ)があるから倉庫に商品取りに行きたいんだけど、怖くて怖くて近づけなくて…」
「千瑚てんちょー。私たち残業確定ですかあ?」
「……森ちゃん、申し訳ないけど事務所行ってフロアの責任者呼んできてくれる?倉田ちゃんは私と一緒にーー…」
「───私、見てきましょうか?」