バイ・アンド・バイ

館から外に出て数メートル歩いた先に各ブランドの倉庫はあって、倉庫の扉に鍵は厳重にかかっているものの、何故か一般客も外側から見えるようになっている。


ただ、セキュリティ甘めだからと言って一般客がその立ち入り禁止区間に忍び込んだ、なんて話聞いたことがないけど……。



「……あ」


急ぎ足で倉庫へと向かっていると、千瑚さん達の言っていた通り、倉庫の前で黒い人影を見つけた。


なけなしの電球でなんとか見える薄暗さが余計に不気味さを際立たせていて、これは近付きづらいな…と妙に納得する。



じりじりと少しずつ距離を縮めながら、すぐに逃げれるように体勢を整えたあと。


間もなくして、男の姿がはっきりと見えてきた。


黒いパーカーのフードを深く被り、スーツのようなズボンにスニーカー。


倉庫の扉に背中を預けて、もたれかかるようにしてぐったりと倒れている。


……思わず声が出そうになったのは、容姿を確認したその直後。



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