バイ・アンド・バイ
────血、だ。
口の端が深く切れているのか、口元から顎先にかけて、たらりと流血していた。
近くで見るまで気がつかなかったけど、肩は忙しなく上下に動いていてわずかに苦しそう。
「大丈夫ですか? 立てますか?」
気づいたらそう声をかけていて、私はそっと男の前にしゃがみこんだ。
だけど動く気配は全くなくて、なんならフードで顔を覆われているから、表情がなんにも見えないまま。
「私の声聞こえますか?」
もう一度声をかけてみる。
息はしているはずなのに、やっぱり反応は無かった。
「……あのー、生きてますか……」
………これで反応無かったら、一旦引き返そう。
そう思いながら、顔をのぞき込もうとおそるおそる男のそばへ、そっと近づこうとした──時だった。