警察の極上プロファイラーが実験と称して私を溺愛してくる
 三十過ぎと思われる彼は鋭い目に細い黒縁の眼鏡をかけていて怜悧な印象があった。ピシッとしたスーツに真っ直ぐなネクタイ、重めの前髪は黒くつややかで知的な雰囲気を加速させているが、表情がないために冷徹さも漂っていた。

「いえ、あなたに頼むわけには」
「俺も県警の人間なので」
 年配の男性がうろたえるが、背の高い彼は気にする様子がない。

「あちらにどうぞ」
 彼に案内されて、隣の相談室に入った。
 四畳半ほどの狭い部屋だった。机と椅子だけでいっぱいになってしまっている。
 彼に勧められて奥に座ったが、なんだか窮屈で居心地が悪かった。密室にイケメンとふたりというのも緊張を高める一方だ。

「あなたの名前と年齢、職業を教えてください」
「空木小夜歌、二十七歳、会社の事務員です」
「で、ご用件は」
「えっと……」
 ぶっきらぼうな聞き方に、彼女は気圧されて口ごもる。

「忙しいんでね、早くしてもらえますか」
 性急な催促にむっとした。いっそこのまま帰ろうか、と思うものの、それではなにも解決しない。せっかく平日に午後休をとって来たのだ、なんとか糸口だけでも見つけて帰りたい。

「実は、ストーカーの被害にあってて」
「どんな?」
「嫌がらせのメールをされたり、私だけゴミ箱のゴミをチェックされたり、気がつくと真後ろにいたりして……同僚のみんなはなにもされないのに」
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