警察の極上プロファイラーが実験と称して私を溺愛してくる
「その様子では相手は会社の人間か?」
「一応、上司です」
 彼から敬語が消えているが、小夜歌にはそれを気にしている余裕がなかった。

「相手の男の写真はあるか?」
「ない、です……」

「男の名前、年齢、役職、外見、家族構成など、わかる範囲で」
「名前は浦岡(うらおか)さん。下の名前は覚えてません。年齢は……確か43歳で、主任です。小太りで、神経質そうで……髪は短くて、背は……普通の男性くらいだと思います。家族は、未婚でご両親と同居と聞きました」

 外見や家族の情報がどうして必要なのか、首を傾げながら彼女は答える。
「もっと詳しく聞かせてもらおうか」
 言われて、小夜歌は会社での様子を語った。

***

 彼女は三カ月ほど前に転職と共にこの雲雀ヶ丘市に引っ越して来た。前職の会社は倒産し、最後の給料は未払いで、貯金を崩しての引っ越しだった。

 転職先は小さいけれど安定が見込める会社の事務で、先輩となる主任の事務の男性、浦岡がいる。

 仕事を始めてすぐに、浦岡は仕事ができない人間だとわかった。
 短い髪はぼさぼさで、シャツはいつもはちきれそうだ。
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